中山道場について
「道場を作れるまで、仕事頑張るから」
私は小学生の息子に、そう発破をかけて練習に向かわせた。あれから何年経っただろう、一時は自己破産しかけた飲食の事業をなんとか持ち直し、気が付けば全国に10店舗。
舞台は遂に整った。私は「中山道場」を開き、ボクシングの世界で夢を叶えようとしている。
空手漬けのあの頃
私は息子を空手嫌いにさせた
元を辿れば、私は昔から空手をやっていた。そして、ごく自然な流れで息子にも空手を習わせた。正直、自分自身が競技者として目標までたどり着けなかった未練もあり、息子のことはとにかく厳しく指導した。大会で勝つためにはとにかく追い込まなければ…弱い自分を隠して、息子にかけるのは強い言葉ばかり。結果、まだまだこれからという時に、息子の方から「空手を辞めたい。ボクシングをやる」と言い出されてしまった。今思えば、あまりに厳しくやらせすぎたのだ。“ボクシングをやりたい”というのも、空手から逃げるためだったに違いない。ただ、これが今に繋がる大きな出逢いになる―。
辿り着いた全国準優勝
拭えなかった気持ちの弱さ
息子はボクシングに転向後、晴れて全国の舞台に上がった。そもそも彼の磨き上げた基礎技術は美しく、他のジムに通うボクサーはもちろん、時にはプロをもシャドーボクシングを覗きに来るほどだった。これこそが私たち親子の自慢だった。が、大会ではあと一歩のところで敗戦、準優勝に甘んじた。親として、これほどまでにもどかしいことは無かった。なぜなら、自分には負けた原因がわかるから。それは“気持ちの弱さ”だ。まさしく、自分と同じ弱点だった。
“弱さを知る者”は
同志にとって“強さ”になる
結局のところ、私も息子も、ボクシングをやっている中で“気持ちの弱さ”を克服することはできなかったかもしれない。「よくあるサクセスストーリーじゃないのか」と拍子抜けするのはまだ早い。私らはボクシング以外にも様々な人生経験を経て、“弱さを知る者”ならではのボクシング塾を立ち上げることにした。ボクシングをやったことなくたっていい、気持ちが強くなくたっていい。だって、私らには弱いからこそ伝えられることがある。一緒にボクシングの基礎を磨き、自分の目標へ向かって高め合おう。
もう一つ加えるならば、私らのボクシング塾には、これから身体を強くしたい小中学生のちびっこや、片やピークを過ぎた“おっさん”も大歓迎だ。そういう私も「親父ファイト」という大会での優勝を狙っている。近年では若い女性向けのおしゃれなボクシングが大いに流行っているが、ここはあくまで“町の道場”。気負わずに門を叩いてほしい。